vol.10
下北半島のニホンザル

青森県下北半島の寒さ厳しい環境が、影響を与えたのでしょうか?
下北のニホンザルは「きずな」や「仲間意識」を大切にすることで知られています。
今回は、二万年以上もここで暮らすちょっと変わったニホンザルのお話です。

厳しいしつけと、助け合いのルールがめずらしい「ボス不在の横社会」を作り上げる。

●横のきずなの強い群れ
 サルは群れをつくって生活しています。通常、群れにはボスを頂点にした縦社会が形成されています。しかし、下北のサルの群れには、特定のボスが存在しません。むしろ、群れのメンバーが調和し、お互いに助け合おうとする横のつながりの強い社会になっています。
 群れの個体数は20〜40頭程度です。この群れの単位で、食べ物を求めて一定の地域を移動します。
 食料は木の芽や歯、花、果実、木の皮、昆虫などを食べます。海岸線に住む群れは、貝や海藻なども食料とします。

●出産から3ヶ月は子供を離さない
 メスザルは通常、春から夏に子どもを生みます。生まれる数はほとんどの場合、1頭です。
 赤チャンザルは生まれるとすぐに、母親の体の毛にしがみつきます。3ヶ月間は母親にピッタリくっついて過ごし、移動するときも母親の胸につかまっています。危ない時は母親が手で支えるので、めったに落ちたりすることはありません。木から木へジャンプするときも、赤チャンザルは母親の胸につかまっています。
 3ヶ月くらいたつと、子ザルは母親の腰のあたりに乗るようになります。子ザルを背に乗せて走っている親ザルの姿は、おなじみですね。成長速度や体力の違いにもよりますが、4〜5ヶ月くらいでときどき母親の背中から降りるようになり、疲れたりすると、移動している母親の腰に後ろから走っていって飛び乗ります。
群れの一員としてルールを母ザルが厳しく教え込む
●サルのしつけは厳しい
 子ザルはだいたい1年で離乳します。しかし1年間、お乳だけを飲んでいるわけではありません。生まれて間もない頃から、母親が食べているものをもらって、口で遊んだりしているからです。それを食べるようになっても、お乳は飲んでいます。不安になると、乳首をくわえることもあります。
 母ザルは子ザルが離乳するまでの間に、生物として環境に適応するために、また群れのメンバーとして生きていくために、不可欠なことを教えます。野生の生物が環境に適応できないということは、死を意味します。群れから外れることも同様です。母ザルの教えは、生死を分かつ重みを持っているのです。
 子ザルは生後3ヶ月を過ぎると、母親から少し独立し、周囲の世界を調べて回るようになりますが、この頃から母親は子ザルを叱り、罰するようになります。たとえば、子ザルの遊びが過ぎて、母親の体に苦痛を与えた場合、冒険をし過ぎて自分でどうしていいかわからなくなり、母親に助けを求めた場合などに、母親は子ザルを叱ります。こうして、どういうことをどの程度すれば、他のサルに危害を加えてしまうのか、また自分に危険が及ぶのかということを、母親は子ザルにしっかり教えています。
 また、社会のもっとも重要な規範となる「やっていいこと、悪いこと」をしっかり教えます。たとえば、サル社会では「他のサルのものを横取りすること」や「突然咬みつくこと」はやってはいけないことですが、子ザルがそのようなことをすると、大人のサルから罰せられ、咬まれたりします。子ザルは厳しく罰せられることによって、してはいけないことが何か覚えていきます。