「皮膚のがん」
体表部、とりわけ皮膚にできる腫瘍はいろいろな形をしています。それこそイボのようなものもあれば、丸いドーム状のもの(写真1・2)、そして平たい板状のものもあります。さらにまぎらわしいものには、ただの赤い斑点にしか見えないものもあり(写真3)、まさにガンの仲間のなかでは「だまされやすい」腫瘍なのです。当然、そのすべてが悪性の腫瘍(がん)であるとは限りませんが、油断は禁物です。
犬の場合、皮膚や皮膚直下の組織に発生する腫瘍は全腫瘍の約3分の1を占めている非常に多い腫瘍で、その中で悪性のものは約20〜30%と報告されています。たかだか20〜30%とはいえ、ただでさえ多発する腫瘍の中での数字ですから、決して少ないとは言えないのです。 |
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なぜ「皮膚のがん」はできてしまうの?
原因は育て方でも食べ物でもありません。ここで一番の皮膚がんの原因をあげるならそれは皮膚の老化であるといえます。すなわち、がんができるということは、長く元気に生きてきた証拠でもあるのです。
生物の身体は何億何兆という膨大な数の細胞が集まって成り立っていますが、この細胞の塊である生命体は、古くなった細胞は死んで新しい細胞をつくるシステムをもっています。
しかし、このすばらしいシステムも何度も繰り返していると故障してしまうことがあります。したがって、年をとればがんになる確率も当然高くなるというわけです。
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その「皮膚のがん」ほっておけばどうなるの?
「そのまま、大きくならずにいてくれるんじゃないの?」「自然に治ったりしないのかしら?」と願いたいのは飼い主の皆さんなら当然のことでしょう。でも、残念ですがそういうわけにはいきません。
「がん」はそのままにしているとどんどん大きくなっていきます。たとえ大きくならなくても表面がジクジクしてきます。さらにばい菌の感染で膿が大量にでき、その臭いもどんどんひどくなり、そのしこりを見て見ぬふりはできなくなってきます。
そして、それより何よりも、がんの「がん」たる所以である全身転移が、知らず知らずのうちにジワジワ進行していくことのほうが大問題です。たかだかイボが、大切な命を落としてしまう原因となってしまうのです。 |
「皮膚のがん」の中で一番厄介な犬の肥満細胞腫
この肥満細胞腫は、動物が太っていることによりできてしまう「がん」ではありません。「肥満細胞」という免疫を担当している細胞が突然勝手にふえて塊になってしまうのです。
犬の肥満細胞腫は、私たち獣医師を苦悩のどん底にたたきおとす腫瘍です。獣医師の持てる全ての知識と技術と勇気をもってしても完治させることができないこともある腫瘍のひとつなのです。まさに「がん」との闘い、そして進行が早いため時間との闘いでもあるのです。
小さなしこりの段階で見つけたにもかかわらず、実はそのしこりの下にも触ってもわからない塊をつくっていることがあります。
またさらに悪いことに、近くの血管をつたわって仲間同士で遠い所の臓器にすでに塊をつくっていることがあります。もしそうなれば、全身が肥満細胞でいっぱいになるのも時間の問題ということになります。
しこりだけを治しても命は救えないのです。 |
早く見つけて!
あなたの愛犬も体の表面にイボやしこりはありませんか?普段から全身をさわっておきましょう。
体の内部にできるものは飼い主さんが見つけることはできませんが、皮膚のがんは普段から体を触ってみたり、なでたりすることで、早く見つけることができます。そして、できるだけ小さいうちに治療することができれば根治の可能性も非常に高くなります。
また、数年前からあったイボやしこりが突然大きくなり始めることがあります。これは今まで良性だったものが悪性のがんに変化し大きくなった可能性も考えられますので、この変化を見逃さないでください。
がんは獣医師だけで治せるものではありません。動物たちを一番よく知っている飼い主である皆さんと協力して、動物たちの健康な生活を守っていかねばならないのです。あなたの愛する動物の命のカギを握っているのは、あなた自身なのです。 |