雌ネコの妊娠メカニズム
雌ネコの場合、卵巣の卵胞内で「卵」が成熟しても、それだけで自動的に「排卵」がおこるわけではない。発情期の雌ネコが雄ネコと交尾すると、その「性刺激」によって雌ネコの卵巣で「排卵」がおこる。つまり、「排卵」がおこり、黄体ホルモンによって子宮が妊娠準備をととのえるときは、交尾後で、妊娠する可能性がきわめて高く、受精卵の変わりに大腸菌などの細菌が子宮内膜で繁殖する余地がほとんどないのである。 |
ウイルスによる子宮感染症
意外と気づきにくいのは、ウイルス感染などの後遺症だ。ご存知のようにネコには、ネコエイズウイルスやネコ白血病ウイルス、ネコパルボウイルス、ネコ伝染性腹膜炎をひきおこすコロナウイルス、ネコカゼのヘルペスウイルスやカリシウイルスなどによる、危険なウイルス感染症がいくつもある。もし、妊娠中になんらかのウイルスが子宮内に侵入してウイルス感染すれば、胎児が死亡して流産し、母ネコも子宮感染をまぬがれない。
また雌ネコが子ネコのとき、これらのウイルスに感染しながら、幸いに生き延びることができたとしても、免疫力が落ちていて不思議はない。そのうえ、みずから妊娠して、さらに免疫力が低下すれば、子宮内で大腸菌などの細菌感染を受けやすい。たとえば、若い雌ネコが流産癖があったり、子宮内膜炎や子宮蓄膿症にかかったりする場合は、これらウイルス感染症をうたがってみるべきかもしれない。
また、雌ネコが妊娠中に原虫のトキソプラズマに感染した場合、胎盤感染して胎児が流産し、みずから子宮感染症になる可能性もある。 |
卵巣と子宮の腫瘍
卵巣の腫瘍では、卵をつくる卵胞にできる顆粒膜細胞腫瘍の約50%は悪性といわれる。また、子宮の腫瘍では、雌ネコには悪性の子宮腺がんが多い。これは、子宮から卵巣、肝臓、リンパ系、さらには脳細胞にまで転移いしやすいといわれており、そうなれば、手遅れとなる。
中高年の雌ネコがかかりやすい乳腺腫瘍も、初発情前に避妊手術を受けていれば、ほとんど予防できる。卵巣や子宮、乳腺などは女性ホルモンの影響下にあり、なんらかのホルモンバランスの異常によって、それらの部位に腫瘍が発現する可能性がきわめて高いのである。また、子宮内膜炎・子宮蓄膿症なども、女性ホルモンのバランスが不安定だと、子宮内の細菌感染をふせぐ機能が低下しやすい。
女性ホルモンは、言うまでもなく、雌ネコ、雌犬の心身の形成、成熟に不可欠な伝達物質で、妊娠のメカニズムを左右する、いわば「命」の交響曲をかなでる指揮者である。 |