vol.15
犬や猫の輸液療法について

「輸液」というより「点滴」という言葉を用いた方がわかりやすいかもしれませんね。
動物病院での犬や猫たちの治療でも、輸液は頻繁におこなわれていますので、
今回はその輸液療法についてご紹介しましょう。

どんなときに輸液するのですか?
 下痢や嘔吐などによって脱水症状を起こした場合など様々な病気治療のひとつの方法として、主に電解質、水分の補給を目的におこなわれます。
 また、食べ物を口から摂ることができない、食べることができない、消化管の病気などで栄養が摂取できない場合に、輸液剤にビタミン類、糖質、アミノ酸、時には脂質などを混合して、体内に栄養素を補給します。手術の前後や重篤な病気の場合にも輸液による栄養の補給や血圧の管理などがおこなわれます。
体液・電解質って何?
 動物たちの身体は体重の約60%が水分です。身体を作っている細胞の中には水分が含まれており(細胞内液)、その細胞と細胞の隙間にも水分があり、血液にも水分が含まれています。これら身体の中の水分をひとまとめにして「体液」といいます。
 身体を正常に機能できるように維持していくためには、この細胞内液と細胞外液の両方のイオンバランスが精密にコントロールされていなければなりません。
 しかし、病気をしたり栄養や水分が十分に摂れていなかったりすると、イオンバランスが崩れ、さらに悪い状態に陥ることになります。そこで必要なのが輸液療法ということになります。
 このイオンバランスの主体となるのが、ナトリウムイオン、カリウムイオン、クロールイオン、リン酸塩、硫酸塩などの電解質と呼ばれる成分なのです。

輸液の投与方法
・静脈内投与
 
静脈内投与は投与される水分、電解質などが直接血管の中に入り吸収されるため効果のあらわれるのも速く、膠質液や高カロリー輸液なども入れることもできます。また、重症で血圧が下がっているような症例では、急速に輸液することで循環の改善を図ることができます。このほか静脈からしか投与できない薬物やゆっくりと投与しなければならない薬物の場合にもこの方法は適しています。
 実施の方法は人間の場合とほぼ同じ要領ですが、動物の場合は人と違い長時間じっとしていることができずに動いてしまったり、針を外そうとしたりするので、たいていの場合、静脈留置針と呼ばれる、軟らかい樹脂製の針を静脈内に入れ、抜けないようにテープなどで固定して輸液を実施することになります。
 このように静脈内投与は血管内に投与するため時間がかかりますし、静脈輸液を受ける場合、入院が必要になることも多いので、血管確保のための費用や入院費を含めると、それなりに費用のかかる治療となります。
・皮下投与
 人間と比べると犬や猫は皮下にかなりゆとりがあるため、投与後、輸液剤がたまった部分は一時的にラクダのコブのように膨らみますが、静脈内投与に比べると輸液剤を短い時間で投与することができます。
 血管確保の必要もなく、何より動物たちを最低限拘束するだけで投与できますので通院でも実施が可能です。
 反面、皮下にたまった輸液剤は毛細血管から徐々にしか吸収されていかないため、その効果は緩やかで、血圧を維持するという効果は期待できません。
 また、重度の脱水などの場合には皮下の毛細血管の血流が非常に悪くなっていますので、なかなか吸収されない場合もあります。主として軽症の場合、水分と電解質の補給に適しています。
・腹膣内投与
 直接お腹の中に投与する方法です。輸液を入れるための血管が確保できないような場合で、皮下投与では吸収があまり期待できない時に行われることがあります。
・骨髄内投与
 骨髄内に直接輸液を投与する方法です。輸液を入れるための血管が確保できない新生児や極小動物で、速い効果を必要とするような場合に行われます。小さい動物では吸収の速さは血管に匹敵するともいわれています。

静脈内投与と皮下投与の特徴の比較

皮下投与
静脈内投与
短時間で実施できる
投与時間
長い時間が必要
大量に投与することができない
投与量
適量を必要な速度で投与することができる
ゆっくりと効果がでる
効果
早く効果が得られる
等張液しか投与することができない
輸液剤
等張液や高張液も投与することができる
輸液剤の中に入れることができる薬の制限が多い
投与薬の種類
輸液中に同時投与できる薬の制限が少ない
主に軽症の場合に適し、重症例には適さない
症例
重症例に適する
投与後、一時的に皮膚が膨らむ
投与時間が短くて済むため通院で実施できる
その他
血管確保の処置が必要
入院が必要になる場合が多い